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2011.04.05

「総社の蔵」古民家再生 完成しました。

数か月前から取り組んでいた「総社の蔵」古民家再生工事が完成しました。もう古い蔵を治すのは何十棟目となるだろう。私にとっては一番多い仕事ではないだろうか。最初お話をいただいてから、しばらく話が止まっていましたから、完成まで、都合、足掛け3年ということになりましょうか。

ぼろぼろだった蔵も見違える姿となりました。街並みに自然に馴染んでいます。私はこの12年古民家再生に取り組んできて、再生は奇をてらうのではなく、街並みに馴染むように素直に再生すべきだと考えています。

設計料だけで食べている場合、普通の建物より目立つように・・・・とか、設計料をもらうからには大工さんがやったのとは違うと言ってもらわなくては・・・とか、いろいろ事情があるのでしょう。取り上げられるいろいろな事例を見てそう思います。

しかし、私にはその必要はありません。目立つ必要もなければ、メディアに取り上げられる必要もありません。お客様が「よーなった、よーなった、きれーになったのう」と言って下されば、それで成功。

普通の街並みに普通に、今まで通り存在している、そういう姿をそのままに。残せる部分はできるだけ残し、コストを抑え、忠実に復元していく。そういう姿が本来の古民家再生だと私は考えています(もちろん最新設備や現代に沿ったプランにしていくことは必要です)。

12年前、私が独立した当時、古民家再生はちょっとしたブームでした。いろいろな古民家再生と言われている事例を見に行きました。

一方、倉敷・美観地区にある旧家、大橋家(倉敷では有名な旧家・名家で一般に公開されています)。この蔵や、母屋のほぼすべての左官工事を、一左官だった私の母方の祖父が行った、ということを、祖父が亡くなってから聞きました。これは行政が行っている復元工事です。

両方を見比べました。その時にすごい怒りにも似た感情が湧きあがってきたのです。それぞれが、何百年も続く旧家、その当時今では想像もできないような富と時間と手間をかけて当時の人々の思いや、人生の全てを投入して建てられたと思われるお屋敷。それを再生と称して、奇抜なデザインや、元のプランや空間が全く分からなくなるほど変形させて再生と称する。古い木は使っているがこれでは立て直した方が早かったのでは?と。これで創建者は喜ぶのかな?と。こんなめちゃくちゃして(そう思ったのです!)、建物に申し訳なくないんか?と。

かたや、「大橋家」。創建者や先祖の思いに忠実に修復している。その建築の力に圧倒される。それと比べると再生、再生と言われる物件はおもちゃだ、と思った。そんな簡単なものではない。我々がちょっと考えて、ちょっとした発想で、変形できるようなものではない。当時の技術の粋を集めている。それだけではない、日本建築のデザインは個人が考えたものではない。何百年、いや何千年にも渡り、日本人が脈々と培って、各時代、各地域の職人が工夫を凝らしながら今に至っている。かけたエネルギーの総量がけた違いなのだ。

だから古い建物、日本建築を扱うというのはすごく力がいる。はっきり言って今のモダン建築のほうがある意味簡単だ。なにをやっても、私のオリジナルです、個性です、でいいわけですから。

古民家再生はその元を作った何百年も前の創建者との戦いでもある。戦ってできあがった時に「よくやった」と言ってもらえるか、「お前、俺には遠く及ばないな」と言われるか。見えない相手との格闘である。

私は若い時から空手家として、一対一の真剣勝負をたくさんしてきたが、戦う相手には敬意を払わなくてはならない。礼節を守り、勝負する。相手の仕事を認め、相手を敬う。すなわち創建者である祖先に思いをよせて、創る。そうすると、創建者がこだわった部分や、残したい部分が自ずと見えてくるものだ。

私の祖父が、旧家、名家と言われるお屋敷に、手を入れる時、そんな思いで仕事をしたのではないかと、想像する。今や聞くことはかなわぬが。私がこの仕事をしだす前に亡くなったので、今生きていればいろんな話ができたのにと思う。

ぱっと、目立つ。そんなものを望まれる方は、どうぞどうぞそちらへ。私は地味でもこつこつと、大切に、小さな修復・修理でも、古いものを治していく。雨漏りを留め、痛んだ部分を治し、創建当時の姿に戻していく。大々的な古民家再生だけでなく、設計料をいただけないようなもの。

そういう需要がかなりあることは、この12年でよくわかった。需要があるところに、世の中の役に立つことがあるわけだから、取り組んできてよかったと思っている。なんせ自分自身が、再生なった建物を見たいからやっているところも多分にある。

そんな思いをもって、いつも古いものを治す仕事を行っている。このたびも目立ちはしないが、街並みに馴染む良い再生がまた一つできたと思っている。この蔵は、更にまた、50年は歴史を刻むことになろう。

今物件は、写真ができたらまたホームページの作品集にアップする予定ですので、機会があれば見てやって下さい。

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