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2012.11.21

古民家の「亀」

P1000017今、古民家再生している家の上座敷のなげし(長押)に亀がいる。

上座敷には、他のなげしにも、亀が取り付けてある。下座敷にはない。

これは釘隠しかと思っていたが、一部取れている箇所があったが、下に釘らしきものはない。

ということはただの飾りだ。これは遊び心というものだ。いいですねえ~。

以前、日建設計という設計事務所に勤務していたが、その会社で「帝塚山学院」という学校の設計をさせてもらった。

旧校舎が大変老朽化して、それを建て替えたのだ。その時は階段の手すりの上に亀と兎がいた。もちろん彫刻であるが、兎と亀のお話を表したものだ。

その兎と亀は大切に保存し、新校舎に取り付けた。

この度は、座敷も壁を塗り替えたり、床の補強や畳替え、建具を新しくしたりとリニューアルするが、この亀はそのまま残る。

もうかれこれ300年もここに住んでいるわけだ。江戸時代から住んでいる亀。亀は万年といい、長寿と繁栄の象徴だったのだろう。

何匹かの亀は皆少しずつ異なる。もちろん全て手造りだからこそだ。こういうものはお金で価値を計れないものの代表格だ。二つと同じものはない。

300年も前の江戸時代の先祖が、思いを込めて取り付けた。それがその願い通り、300年の年を超えて存在している。

この亀を見ていると「おお、ええなあ~」「こりゃあええど~」というような300年前にこの家を新築された時の、ご先祖様の息吹が聞こえてきそうだ。

そういう家を残し、甦らせ、これから更に100年、200年と住みついでいける家にする。命をもう一度吹き込む。

そのお手伝いをさせていただける私の仕事。

本当に、本当に、自分ながらに惚れ惚れするようないい仕事につかせてもらっているなあ、と改めて思う。私の自慢だ。

自分の仕事を愛し、取り組める。この幸せは、本当に建築を志して良かったと、いい仕事を選んだなと思える瞬間だ。

特に古建築が好きで、歴史が好きで、趣味と実益を兼ねている。

若い時、私の空手の師範に言われた。「男の仕事は、生活をするために割り切り、その代わり趣味に生きるか、仕事そのものを生きがいにし、死ぬ気で取り組むか、どっちかだ。中途半端はいけない。」と言われた。

私は迷わず、後者を選んだ。男は一生働かなければならない。ならば、その仕事を愛し、命懸けでできるようないい仕事を選ぼうと思った。

どうやらそれは正解だったようだ。私は建築に救われたのだ。

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