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2013.03.14

古民家再生を専門に行う一級建築士

医者を見ていても思うが、最近の医学は専門家、分業化されていて専門分野が違うと診断もしないし、一般論的な説明しかしない。これはしないというよりわからないのだろう。参考書を読んで述べる程度のことしか言わない。

建築士も同じようなものである。一般の方にとっては一級建築士といえば建築のプロであろう。しかし、それは間違いである。今は試験に必要な実務経験に注文がつくが、以前は甘かった。だから毎日コンクリートの研究をしたり、便器を設計している、とか、タイルを造っている者でも一級建築士は取れた。

私は以前、建築士試験を取らすための学校で講師をしていたのでよくわかるが、ただ、大学を出ただけで、全くのズブの素人が来る。そしてわずか半年ほどトレーニングしただけで合格していくのである。

だから、確かに一級建築士免許をもっていれば、ある一定の知識はあるが、それをもってこの人は建築のスペシャリスト、建築についてはなんでも知っている、と思ってはならない。まったく設計のできない人もいるのである。それに一級建築士試験ではデザインができるがどうかは全く関係ない。デザインは点数化しにくいからだ。

さて晴れて一級建築士となり、設計事務所に勤めながら経験を積んでいるとしよう。それでもその人をスペシャリストと思ってはいけない。よく何でも設計できるという輩がいるが、何でもできる、とは実は何もできないということの裏返しなのである。

私は世界一といわれる設計事務所、日建設計の設計部にいたが、病院や学校などいろいろな建物を設計し、経験を積ませてもらった。何物件もやり、それなりに設計をやってきた。医療福祉関係の建物なら多少わかるし、鉄筋コンクリートの建物なら設計はできた。そこまでいくのに、大学で4年、大学院で2年、その間も設計事務所でバイトもし、経験も積んだ。それから就職して、さらに7年、日建設計で経験を積み独立。

しかしながら、その程度で、到底何かのスペシャリストとはいかないのだ。そこからさらに今日まで15年。建築の道に入って今年で28年になる。建築一筋だ。

この15年は設計だけでなく施工も含め、古民家再生ばかりをやってきた。他のものも多少やったが、ほぼ古民家再生ばかり。15年で小さなものも合わせれば100物件は手掛けてきた。

そこまでやってやっと最近、古民家再生について、わからないとかできないとか、不安になることはほとんどなくなった。古い民家なら任せとけ、と胸を張って言えるようになった。試行錯誤、とにかく現場、現場で、現場主義。現場ですべての仕事を覚えたといってもいい。製図机の前に座っていても何もわからない。答えは現場にある。

けっこう設計士で古民家再生をする人はいるのだろうが、古民家再生もする、または、設計だけする、という人がほとんどだ。私から言わせれば古民家再生もする、程度でできるような代物ではない。

私は、設計をやってこれだけ現場を熟知している者はいないと自負している。それは我社には現業がいて、一緒に作業したり、悩んできたからだ。これは設計事務所にいた頃には考えられないことだ。とにかく隅から隅までわかるようになった。

もちはもちやと言う。至言でしょう。一級建築士でも、専門分野以外はわからないものです。眼科に行って腹が痛いのですと言っても仕方ないでしょう。日頃、新建材で新築ばかりやってる設計士に古民家を相談しても仕方ない。

設計しかやってない人に現場の細かいことを聞いてもわからない。

この世界は実績と経験だ。10件しかやってない人より、100件古民家をやっている人の方が古民家は熟知している。もちろん基本的な素養があってのことだが・・・。しかし経験するごとにうまくなるのも医者も一緒だろう。

10件しか手術の経験がない医者より、100件。しかも胃と脳と心臓は違うのだ。

私は、独立してから、いろいろお誘いがあったが、他はやらなかった。日建設計という巨大事務所で大規模建築ばかりをやっていたので、当初は大きな施設やマンションなどの仕事も声がかかったが、もともと古建築が好きで、古民家をやったことでその魅力に取りつかれ、あまりに忙しくて他に手を出す余裕はなかった。

それがよかった。最近では古民家なら小野さんにと、頼んで下さる人ばかりになった。「この設計士さんは設計だけして丸投げではなく、施工まで、最後まで全部責任もってしてくださるんよ」と。有難いお言葉だ。

今後も独立してしばらくして決めた「古いものを治す専門家」になるという道をひたすらに追求し、今以上に、古民家再生なら「ONO CORPORATION」だと言ってもらえるように、この「お道」を追求していきたいと思っている。

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