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2019.10.25

水害からの復旧~その6~罹災証明や保険について

台風19 号の被害に遭われた方の、罹災証明や補償についてのニュースをよくみかけるようになった。

真備の場合、当初行政の対応は素早かった。真備はほとんどの地域が3m以上浸水しているのは明らかだから、被災した写真を見せて、身分証明書を出し、住所を言えば、書類を書いて、ほぼその場で全壊の罹災証明を発行してくれた。これは後々保険会社との交渉や、いろいろなところで補償を受けるのにずいぶん助かった。私の場合、自分でやっている暇がなかったので、一部、スタッフに頼んだが、委任状さえあれば対応可能であった。

全壊だと、新築すれば300万円、リフォームだと200万円を行政が補償してくれる。また、二世帯住宅の場合はどうなるか?二世帯分を出してもらえるのか?そのあたりは当時基準が明確でなかったようだが、どうやら建築的なことは関係なく、住民票の世帯主がそれぞれおれば二世帯、一人であれば一世帯とみなされたようだ。

今から思うと、この当時は、倉敷市役所の最上階の大会場で、受付をしており、まさに野戦病院、急場の戦場のようであった。復旧作業の途中で抜けて来ている被災者も多く、暑さと疲れ、不安、焦り、役所対応の不満等々で、大声をあげている人がそこら中にいた。みんな必死だった。私も当時は役所の対応に不満を持ったが、今から思うと、こんなことは役所の人たちも初めての経験で、県外からの応援の人もいて、受ける方も必死だったんだなと思う。

復旧しながらの、罹災証明の手続きは大変だったが、他の行政庁の話を見聞きすると、真備は被害が大きかった分、役所は迅速な対応を取ってくれたんだなと思う。だた、罹災証明の申請が遅くなった人は苦労したようだ。というのも、その後、詐欺まがいのことが発生し、他の家の写真を見せて、被害をたいして受けてないのに、全壊の罹災証明を取ろうとしたり、申請書に虚偽を書いたりという事例が多数起こり、役所は対応を厳しくせざるを得なかったようだ。

よって後から申請した人は現地調査を受けて、浸水深さや被害状況を確認してもらった後の交付となり、かなりの日数がかかったようだ。まさに悪人の為に善人が被害を被るという最悪のことが起こっていたのである。人が善意で行おうとしていることが、悪用される。役所の人と打ち合わせしているとき、私が、

「どうしてもっと早く皆さんに対応してあげないのか?」

というようなことを言うと、

「みんなが小野さんのように正義感が強い善人ばかりなら、僕らもここまでしないんです。でも実際は本当に悪いことをする人が多いんです。だから手続きが煩雑になるんです」

と本当に困った顔をされていた。

その時は一被災者として本当に怒りがこみ上げた。99%の人は善意の人で、わずかな悪人の為にみんなが被災して大変な時に、更なる大変な手間と苦労を、役所も被災者もしないといけない不合理。それが人間の世の中といえば、それまでだが、

「愚かなる者、その名は悪人なり」である。

話がそれたが、補償は床上1m以上浸水したか、が基準となっているようだが、真備の場合は、ほとんどが1m以上は浸かっている家が多く、この度の台風19号のように、1m以下の浸水が多く9割の人が補償対象外になるというような問題はあまりクローズアップされなかった。ただ、この基準は現実を反映していない。

1m浸水した人と80センチ浸水した人の被害はほぼ変わらないからだ。

だいたい普通規模の木造住宅の場合、1階だけならリフォーム代は、800万~1500万くらい(仕様による差が大きい)、標準だと、だいたい1000万少し越え、くらいで出ている場合が多い。これは80センチでも2mでもあまり変わらないのだ。なんせ1m浸水でも2mでも一階の壁、床はほとんど撤去しないといけないし、お金のかかる水回り、ユニットバスやキッチンは同じようにやり替えないと使い物にならない。(もちろん洗浄して再利用する場合もあろうが、それは浸水深さによる判断ではなく、ほとんどはコストの問題だ)、もちろん家具も全部だめになる。

更に、2階まで浸かると、建て替えになることが多く、リフォームするには1階だけ浸水した場合と比べると、費用がかなり多くかかる。

当然、行政の補償には限度があるから、全てを賄うことはできない。だが、今の基準では1mと90センチの人では大きく補償が異なる。全壊や半壊の違いでも、今後仮設住宅や家賃保証等々にも差が出てくる。そうすると相当な不公平感が出る。金額的被害としては同じなのに、補償されたりしなかったりするからだ。

私の提案としては、補償の総額は限度があってしかるべきだが、

①床下浸水

②1階床上浸水

③2階床上浸水

と分ければ不公平感はなくなると思う。実際の復旧にかかる費用で分けた方がいい。ただし、一階浸水を深さに関係なくすべて補償するとなると棟数が増えるわけだから、一件当たりの補償額は当然減ることになる。税金を際限なく投入する余裕は国にはないだろう。

また火災保険の方も浸水深さで基準を設けている場合が普通だが、今後見直して欲しいところだ。浸水深さより、復旧すにはどのくらい費用が掛かるかで判断したらどうか。見積もりを提出したりして、ある程度そうなってはいるが、浸水深さが浅いから、そんなに費用かからないでしょう?という論調はおかしいのだ。

また私は5つの所有建物が浸かり、保険会社も同じところではなかったので、個別にいろいろ交渉したが、これまた、交渉のやり方や、保険の在り方についていい勉強になった。保険会社によって全く対応も違った。

行政の補償は、あくまで見舞金のようなものと考えるべきで、たとえ全壊と認められて、補償を受けられたとしても、再建の総額からいうと、ある意味焼け石に水だ。当然、各々が自己責任において、己の資産を守るために、手厚い保険なり補償に入っておくべきだ。

ここ最近の日本の自然災害を見ていると、私は、いつ、どこで、誰の身に災害が起こってもおかしくない状況だと思っている。にも拘わらす、ネット上の書き込みには「ざまあみろ」「そんなところに住んでる奴が悪い」的な書き込みを散見するが、己だけは特別、災害には遭わない、と思っているのだろうか。

被災者のインタビューで

「数十年ここに住んでいるが、こんなことは初めてだ」

と多くの人が答えているのが、一つの回答であろう。

 

「他人事と、思うておることが、やがてや己の身の上にふりかかる世や」

肝に銘じたい。

 

 

 

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