カテゴリー「古民家再生の手法」の記事

2013.11.10

古民家再生の手法 (2)基礎

古民家を再生する場合の「基礎」の考え方

古い民家をお持ちの方はまずその基礎について話題にされることが多い。どんなにお金をかけても基礎がだめならすべてだめと言う言われ方をする方も多い。

私から言えば、そうでもない。

基礎からやるとすれば、建物を持ち上げて、基礎の鉄筋を組み、コンクリートを流し込む。

確かに「きちんと」なるであろう。設計する方としてもそこまですれば文句なしだ。

しかしながら、100人の古民家再生を希望する人がいて、そこまでの費用が出せる人が何人いよう。

古民家は100年以上も経過したものも多い。その間地盤の沈下や、建物自体の場所による荷重の違いなどで不同沈下を起こしているものも多い。

最初驚いたのは、鉄筋コンクリートの建物であれば右に傾けば、建物全体が右に傾いているものだが、木造で、しかも基礎は延べ石というような古民家では、こちらは西にに傾き、こちらは東にに傾き、という傾き方をしている。

柱がてんでばらばらの方向に傾いていることも多い。ただ、鉄筋コンクリートの建物と比べて、木造の柱の数はぼう大で、一本当たりの柱にかかる荷重は知れている。

古民家再生をしているとよく、完全に柱や梁が腐り、根元からなくなっている場合が多々ある。全く荷重を受けていないのだが、建物は傾いてもいないことがある。それはこういう理由なのだ。

建物の沈下。これを直すには、家曳き等を専門とする業者に、完全に建物も浮かせてもらわなければならない。また、全体を持ち上げるならよいが、部分的にジャッキアップすると、たいがいは一度には持ち上がらないので、ひねりが生じ、壁などがほとんど損傷する。よって再生には大変な費用がかかってしまう。

もう一つはそこまでするのなら、いっそのことほとんど解体し、梁と柱だけにするか、ばらして再度組み上げるかだ。これは法的にはいろいろと解釈があり問題になるところだが、長くなるのでまた後日述べようと思う。

技術的にはこの方が簡単かもしれない。しかし、これもまた手間がかかることには違いない。すなわち費用がかさむ。

私は今まで60棟以上の古民家を再生してきた。相談はたぶん数百件受けている。ふんだんに費用のある方ばかりではない。いや逆に限られた予算の中で行いたい、と言われる方の方が当然多い。

初期の頃はよく、全体の再生計画を出し、予算も驚くべきものになることがあったが、現在は良くお話をお聞きし、限定した範囲であっても、できるだけ理想に近い提案をさせていただくよう心掛けている。

お施主様さえ気づかれていない、本当の要望を見抜いていく力とコミュニケーション能力が必要だ。

まず、屋根をふき替えるだけで、大量に瓦の下に敷き詰められた土を撤去するので、建物全体の荷重はすこぶる軽くなる。地震力は荷重に比例するからそれだけでもずいぶん建物は楽になる。

そしてプランを工夫し、耐力壁や金物で補強していくわけだから、再生前より耐震性が劣ることはない。

後は予算との相談だ。

機能、デザイン、耐震性と、どこにお金をかけ、どこを我慢するか、バランスを取って設計し、ご提案する。

そこが設計者の腕の見せ所というものだ。

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2013.11.05

古民家再生の手法  (1) 基本的な考え方

私は古民家再生を長くやっている。

そして私の事業の主軸にして15年が経つ。その間再生した古民家は大小合わせて60棟以上にもなる。

もちろん設計だけやるような中途半端な関わり方ではなく、すべて施工まで自社で責任をもって行う。設計だけやるのと比べて100倍はエネルギーがいる。

よって設計だけやる場合と比べ、関わることができる物件数は減る。しかし、全てに責任が持てる。もちろん、電気や設備のような専門的なところ以外、すべて私と、正社員である私の社員がやる。分離発注だの、外注だの、マネージメントだの、そういった今風のことはしない。

自分が飯を食わせて、面倒をみて、子供のように育て、全てにおいて責任が持てる私の社員にさせるのが一番確実なのだ。他者に頼ってはろくなことにならない。

試行錯誤、多くの失敗をした結果たどり着いた手法だ。案外古典的だ。人間は言葉でいくら言ってもダメだ。心がないと絶対に人は動かない。私は社員一人一人と深くつながっている。あくまで家庭的な関係だ。

そして、薄利多売の商売もしない。とうの昔にその考えは捨て去った。会社は大きくなるかもしれないが、どうしても私の目が届かなくなる。

選択を迫られた時があったが、私は会社の拡大を取らなかった。メーカーのようにはなりたくなかった。

一つ一つの作品の「質」に自分が責任を持てなくなるし、社員一人一人の「人格」にも責任を持てなくなると思ったからだ。自分のよく知らない人に、私の仕事を触らせたくもないし、お客様の大切な財産に触れさたくないし、目に触れさせたくもない。

もう長く、私は、ごく選ばれた、極上に自分と馬の合う、選び抜かれたお客様の仕事だけをしている。オファーはたくさんあるが、私がお受けできるのはごくわずかだ。

いくらお金を積まれても、方向性が違うと思った場合は、お断りする。別に一年に1件しかできなくても構わないと思っている。

独立初期の頃には、馬の合わない人とも仕事をせざるを得ないことが多々あった。それはお互いに不幸なことである。しかし、独立当初は全く仕事がなく、その上、従業員も養わなくてはならず、何でも仕事であればさせてもらった。「別に私でなくてもいい人」の仕事も、なんでもさせてもらった。

その後、おかげさまで多くのお客様からオファーをいただくようになってからは、本当に相性の良いお客様とだけ仕事をさせていただくようになった。

それは傲慢とか、わがままとかいうものではなく、そうすることがお客様にとっても良いからだ。世の中には、建築家など吐いて捨てるほどいる。自分と本当に相性のあう人を探したほうがその人にとっても良いのだ。

私は建築家であるから、自分が納得できないことは絶対にしない。結果として、お客様が不利益を被るからだ。

そして私は嘘をつかない。全く正直である。商売人は上手に嘘をつく者もいるが、私は正直主義で今まで通してきた。

15年前、独立したとき、「あなたはあまりにバカ正直だから、もう少し上手に嘘がつけないと商売は成功しないよ」とまことしやかにアドバイスしてくれる人がたくさんいた。

そんなものか、と思いやってみるのだが、声は上ずるし、顔色は変わるし、言葉も上手に出てこない、その上、なんせ胸のあたりが苦しく、なんともストレスがたまる。

よってある時、本来の自分そのままを出して、ひたすら正直にやることにした。確かに多くの仕事を失ったかもしれないが、私のお客様は、駆け引きをしない、とても誠実なお客様ばかりになった。

その方向性は間違っておらず、そこから事業は軌道に乗った。

今後も正直主義を貫き、良いことも悪いことも、すべて真正直にお客様にお話しし、お客様の利益を守り、より良い作品を造ることを第一義としていこうと思う。

人生において一番大切なことは、「正直であること」、「嘘をつかないこと」だと思っている。

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